第3回は前回調べた酒蔵建築と地域の変容の考察を踏まえ、わたしたちが考える今後の酒蔵のあり方をまとめました。 四季蔵は1960年代前後、灘五郷において大量生産システムの中核施設として数多く建設されましたが、そのコンクリートは分厚く、簡単には壊せそうにありません。見た目も、いわゆる酒蔵とはかけ離れた威圧的な表情が感じられます。そんな四季蔵を魅力ある酒蔵へと改修・再生する提案です。
仕込み、貯酒(タンク)の行われる階にGlass Window(開口)を設け、閉ざされていた酒造りを都市に開きます。
酒蔵には建築的な各階の床レベルとタンクレベルの二つの床が存在します。Water Jacket(水を通すパイプ)と既存の外壁の間にWalking Passage(作業導線)を設け、滑らかで合理的な人の流れを作ります。Glass WindowとWalking Passageによって、人の流れを含む立体的な生産工程は流動体としてWater Jacketのファサードを透かし都市に露出するでしょう。
各工程で大量に消費する水をパイプを通して循環させます。水は外断熱材として機能し、都市と酒蔵の温度を
コントロールすることができます。
かつての酒蔵の煙突からは蒸米の蒸気が立上がり、町には酒の香りがほのかに漂っていたようです。そこで、蒸気も香りも閉じ込めてしまったコンクリートの箱に2つのWood Boxを設けます。そのWood Boxからは蒸気と香りが町に放たれます。